大判例

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高松高等裁判所 昭和30年(う)434号 判決

本件被告人の強姦未遂罪については昭和三十年一月十五日三好警察署の東祖谷山村落合巡査駐在所でその被害者金子初美の告訴調書が作成せられており、同罪が徳島地方検察庁の検事斎藤典男によつて原審徳島地方裁判所に起訴せられた昭和三十年一月二十六日と同日に徳島池田区検察庁が願出人前示金子初美及びその内縁の夫西脇秀男両人名義の請願書と題する書面を受け取つているが、その請願書の記載内容は要するに「情状御賢察遊ばされて今回に限り特別の御寛大なる御訓戒程度に止め、本人の身柄については御放置願えれば、私等の本望であります。」と言うのであつて、先に金子初美のなした告訴を取り消すとの意思、即ち先に金子初美が司法警察員に対してなした「あの様な悪いことを致す人が工事場にいては商売も出来ませんし、安心して寝る事も出来ませんので、厳重な処分の程を願います」との意思表示を撤回する意思は現われていないのである。告訴の取り消しは先に為した告訴を撤回する訴訟手続上の行為であつて、既に捜査機関に対し他人を告訴した者が後日単にその他人に対する寛大な処分又は不処罰を望む旨を捜査機関に申し出たとしても、先になした告訴を撤回する意思のあることが明らかでないならば、告訴の取り消しがあつたとは言えないのである。本件について被害者金子初美の告訴の取り消しがあつたとは認め難いのである。

なお原判決には「本件強姦未遂罪は徳島地方検察庁の所管に属するものであるから、告訴取下書を徳島池田区検察庁に提出したのみでは未だその効力を発生するに由なく」とあるが、告訴の取り消しを受理する権限が、当該告訴を受理した検察官、司法警察員その他同人等と同一の官公署に所属する検察官、司法警察員又は現に当該事件を取扱つている検察官、司法警察員に存することを否定する趣旨ではないと解すべきである。

(裁判長判事 坂本徹章 判事 塩田宇三郎 判事 渡辺進)

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